「最近、肩が凝って…」「腰が痛いのは年のせいかな…」 クライアントや患者さんから、このような「痛み」や「凝り(こり)」に関する訴えを聞かない日はない、という若手PT・トレーナー・ヨガインストラクターの方も多いのではないでしょうか。
私たちはつい、これらの症状に対して「よくあること」「仕方ないこと」と考えてしまいがちです。しかし、本当にそうでしょうか? 今回は、身体が発する「痛み」や「凝り」というサインの本当の意味と、私たちが持つべき視点について、深く掘り下げてみましょう。
痛みや凝りは、どうして生まれるのか?
身体は非常に正直です。筋肉や関節に**「過緊張」や「硬さ」が生じると、その部分ではスムーズな動きが妨げられ、血液循環が悪くなったり、微細な損傷**が起きたりします。
すると、身体は「ここに問題があるぞ!」というサインとして、発痛物質(ブラジキニンやプロスタグランジンなどが有名ですね)を分泌します。この物質が神経を刺激することで、私たちは「痛い」「凝っている」と感じるわけです。
多くの人が陥る「大きな誤認」
ここからが重要なポイントです。多くの場合、この痛みや凝りに対して、**「老化のせいだ」「日常の活動や仕事の結果として仕方ない」と認識されてしまいます。しかし、テキストにもあるように、それは「大きな誤認」**なのです。
もちろん、加齢による変化や活動による疲労は存在します。しかし、痛みや凝りは「正常な状態」ではありません。それは、身体のどこかに**異常な状態(=根本的な原因)**が存在することを示す、大切なメッセージなのです。
「痛みは警告」- あなたはそのサインをどう扱いますか?
まさに、**「痛みは警告」**です。 考えてみてください。私たちはパソコンのウィルス対策ソフトが「危険!」と警告を出せば、すぐに対処しようとしますよね? それなのに、自分の身体が発する痛みの警告に対しては、「うるさいな」「迷惑だな」と感じて、痛み止めで感覚を麻痺させたり、無理に動き続けたりしてしまうことはないでしょうか。
痛みに蓋(ふた)をすることのリスク
痛みを無視したり、一時的に感覚をごまかしたりして**「痛みに蓋をする」ことで、動き続けることはできるかもしれません。しかし、それは身体に本来備わっている「痛みというブレーキシステム」、あるいは古来からの「大切な教え」**を無視していることに他なりません。
ブレーキが効かないまま走り続ければどうなるでしょうか? 結果的に、根本的な問題は解決されないどころか、さらに悪化し、より大きな問題へと発展してしまう可能性が高いのです。
痛みが出る前にもサインはあった?
多くの場合、「痛い!」とはっきり感じるずっと以前から、身体は何らかのサインを出してくれています。
- アライメント不良(姿勢の崩れ)
- オーバーユース(使いすぎ)
- アンバランス(筋力や柔軟性の偏り)
- 慢性的な微細な炎症
これらは、いわば「小さな警告」です。普段から自分の身体やクライアントの身体を注意深く観察し、これらのサインに気づき、早期に対処することができれば、痛みという「大きな警告」が出る前に問題を解決できるかもしれません。
痛みは「結果」であり、「原因」ではない
最後に、最も大切な考え方を再確認しましょう。 「痛みは原因ではなく、痛みは異常な状態に対する正常な反応として生じた結果である。」
つまり、私たち専門家がアプローチすべきは、痛みという**「結果(症状)」だけではなく、その痛みを引き起こした「異常な状態(原因)」**なのです。
まとめ:身体の声に耳を澄まし、根本原因へ
痛みや凝りは、決して無視してよいものではありません。それは身体が私たちに送る重要なメッセージであり、根本的な問題の存在を示唆する警告です。
若手のPT、トレーナー、ヨガインストラクターの皆さん、クライアントや自身の身体の声に真摯に耳を傾け、「なぜこの痛みや凝りが生じているのか?」という視点を常に持ち続けてください。そして、症状の緩和だけでなく、その奥にあるアライメント不良、アンバランス、不適切な動作パターンといった根本原因にアプローチすることを目指しましょう。
(IASTM協会ブログとしての追記例) ちなみに、筋膜の硬さや癒着、滑走不全なども、この「異常な状態」の一因となり、過緊張や循環不全を引き起こすことがあります。適切な評価に基づき、筋膜へのアプローチ(IASTMを含む)を検討することも、根本原因への対処に繋がる可能性があります。
真の健康とは、単に痛みがない状態ではなく、身体がスムーズに、効率よく機能している状態です。その実現をサポートするのが、私たちの役割ではないでしょうか。
このブログ記事が、若手の専門家の皆さんが痛みや凝りに対する理解を深め、より本質的なアプローチを提供するための一助となれば幸いです。
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