斜角筋群
位置
斜角筋は頚部の外側にあります。 前斜角筋の上部は 胸鎖乳突筋の深層にありますが、下部は表層で胸鎖乳 突筋の後方にあります。 中斜角筋は前斜角筋のすぐ外 側にあります。 後斜角筋は非常に小さい筋で、 中斜角 筋の外側で肩甲挙筋との間にあります。
起始と停止
・前斜角筋
起始: 第3~6頚椎の横突起
停止: 第1肋骨前面 (起始よりも前方)
・中斜角筋
起始: 第2~7頚椎の横突起
停止: 第1肋骨 (頚椎の横突起に着く起始よりも明らかに下方)
・後斜角筋
起始第4~6頚椎の横突起
停止: 第2肋骨 (頚椎の横突起に着く起始よりも明らかに下方)
機能
両側の収縮時は、 頚部の屈曲。
片側のみの収縮時は、頚部の側屈と反対側へのわずかな回旋。
第1-2肋骨の挙上により、吸気の補助としても働く。
機能の説明
前斜角筋が頚椎横突起の起始を第1肋骨の停止に向かって前方に引
注目すべき点
この筋が呼吸において重要な役割を果たすとする報 告がいくつかあります。 第12肋骨の挙上という機能 がこの主張の理由となっています。 また、この筋は不 必要な頚部の側方への動きを制限することで、頚部の 姿勢制御に役立っています。
短縮や伸長による機能低下
短縮:片側のみが短縮した場合には、頚部はわずか に反対側へ回旋します。 また反対側への頚部 の側屈が制限されます。 頚部の側屈筋群の短 縮のみによって、患者が頚部の側屈位を示す ことはあまりありません。なぜならば立ち直 り反射が筋緊張の不均衡を代償して、両目が 水平になるよう姿勢を修正するからです。 また両側が短縮した場合には、 頚部を完全に伸 展することが制限されます。 しかし日常生活 動作が困難になるほどに、 頭頚部が屈曲位を 示す姿勢を見かけることはほとんどありませ ん。 従って、私たちは脊柱や骨盤のアライメ ントを変化させることによって、 頚部の屈筋 群の短縮による影響を代償していると考えら れます。 このような脊柱や骨盤のアライメン ト変化による代償は、これらの部位に痛みを 引き起こすことがあります。 さらに前斜角筋 と中斜角筋の間を腕神経叢が通っているの で、これらが短縮したり緊張したりすると、 腕神経叢が挟み込まれて胸郭出口症候群が起 こります。
伸長: 斜角筋の機能が低下します。
ストレッチ方法
頚部を反対側へ側屈させます。
共働筋
頚部の屈曲、側屈、反対側への回旋:胸鎖乳突筋
拮抗筋
頚部の伸展、同側への回旋:頭板状筋、 頚板状筋、後頭下筋
筋性疼痛による症状
頸部の側屈可動域制限が著明 過呼吸症候群など呼吸症状に関与
上肢や手指にかけての痛みや痺れ
むち打ち症の時に肩甲挙筋や胸鎖乳突 筋とともに損傷し、強い痛みと可動域制 限を発現する
関連する疾患
斜角筋症候群
上位型腕神経叢麻痺 (エルブ麻痺)
下位型腕神経叢麻痺 (クルムプケ麻痺)
胸郭出口症候群
第一肋骨疲労骨折