こんにちは(^^♪
IASTMの認定資格をベースに、筋膜リリースの本質と機能解剖学、スクリーニングテスト等をお伝えしている**日本IASTM筋膜リリース協会-EXA(イグザ)**広報部です♬
理学療法士やトレーナーの皆様、「力こぶの筋肉は?」と聞かれたら、多くの方が「上腕二頭筋」と答えるでしょう。しかし、肘を曲げる力において、その上腕二頭筋よりも強力で、より本質的な役割を担っている筋肉があることをご存知でしょうか?
それが、上腕二頭筋の深層に隠れた「真の主役」、今回のテーマである**【上腕筋(じょうわんきん)】**です。
上腕筋は、その地味な存在感とは裏腹に、肘関節の痛みや可動域制限(特に「肘が伸びきらない」という症状)の根本原因となることが非常に多い筋肉です。肘の痛みを訴えるクライアントに対し、上腕二頭筋やテニス肘に関わる前腕の筋肉ばかりに目を向けていると、この重要な筋肉を見逃してしまうかもしれません。
この記事では、基本的な機能解剖学から、理学療法士やトレーナーが結果を出すために不可欠な臨床上の重要性、運動連鎖、そして具体的な筋膜リリースやIASTMを用いたアプローチ法まで、肘関節アプローチの精度を格段に向上させるための情報をお届けします。

日本IASTM協会-筋膜リリースの為の機能解剖学-上腕筋
1:上腕筋の機能解剖学 – 肘を曲げる真の主役
まずは、上腕筋の基本情報を正確に把握し、なぜこの筋肉が「真の主役」と呼ばれるのかを理解しましょう。
位置と構造
上腕筋は、上腕骨前面の遠位1/2(肘に近い半分)に位置し、上腕二頭筋の深層に完全に覆われています。上腕骨に幅広く、べったりと付着しているのが特徴で、その構造が強力な力を生み出す源泉となっています。
起始
- 上腕骨中部前面
停止
- 尺骨粗面(しゃっこつそめん)
神経支配
- 筋皮神経(きんぴしんけい) (C5, C6) ※一部、橈骨神経の支配も受ける二重神経支配のケースもあり、その場合は筋皮神経が麻痺しても機能が完全には失われないことがあります。
【重要】上腕二頭筋との決定的な違い
上腕筋を理解する上で、上腕二頭筋との違いを知ることは極めて重要です。
- 上腕筋: 肘関節のみをまたぐ**「単関節筋」**です。
- 上腕二頭筋: 肩関節と肘関節の2つをまたぐ**「二関節筋」**です。
この違いにより、上腕筋は肩関節の動きに影響されず、純粋に肘関節を曲げることだけに集中できる、非常に効率の良い屈筋として働きます。
2:上腕筋の機能 – 純粋かつパワフルな肘屈曲
上腕筋の機能は、ただ一つ。しかし、その働きは極めて強力かつ重要です。
機能:肘関節の屈曲
上腕筋は、断面積の大きさから**「最も強力な肘関節の屈筋」**とされています。しかし、その真の価値はパワーだけではありません。
上腕筋の最大の特性は、**「前腕の肢位(回内・回外)に関わらず、常に安定して肘を曲げることができる」**という点にあります。
- 上腕二頭筋は、手のひらを上に向けた**「回外位」**で最も強く働きます。
- 腕橈骨筋は、親指を上に向けた**「中間位」**で最も強く働きます。
- 上腕筋は、これらと異なり、手のひらを下に向けた**「回内位」**でも、他のどの肢位でも、力強く肘を曲げることができます。
ハンマーで釘を打つ(中間位)、重い荷物を手のひらを下にして持ち上げる(回内位)など、日常生活のあらゆる場面で、この上腕筋が「縁の下の力持ち」として働いているのです。
3:臨床における上腕筋の重要性
ここからは、理学療法士やトレーナーが臨床で遭遇する問題と、上腕筋の深い関わりについて解説していきます。
肘前面の痛みの最大の原因
重量物を繰り返し持ち上げるトレーニングや仕事、あるいは肘を曲げたままの姿勢を長時間続けるデスクワークやスマホ操作などで、上腕筋は過緊張を起こしやすく、トリガーポイント(筋硬結)の好発部位となります。 このトリガーポイントは、肘の前面に痛みを感じさせるだけでなく、特徴的な関連痛として**「親指の付け根(母指球)」**あたりに痛みを放散させることがあります。クライアントが親指の付け根の痛みを訴える場合、手や手首だけでなく、この上腕筋が原因である可能性を考慮する必要があります。
肘関節の伸展制限(屈曲拘縮)
上腕筋が短縮・硬化すると、拮抗する動きである肘の伸展が制限されます。「肘が完全に伸びきらない」「肘を伸ばすと前面が突っ張る」といった症状の主因は、この上腕筋にあることが非常に多いです。骨折後のギプス固定などで長期間肘を曲げていた後に、この屈曲拘縮が大きな問題となります。
上腕二頭筋腱炎や外側上顆炎との鑑別
肘前面の痛みは、しばしば「上腕二頭筋の腱の痛み」と混同されがちです。しかし、実際にはその深層にある上腕筋の問題であるケースも少なくありません。正確な触診と評価による鑑別が重要です。 また、上腕筋の過緊張は、筋膜の繋がりを介して前腕の伸筋群にまで影響を及ぼし、間接的にテニス肘(外側上顆炎)の症状に関与することもあります。
スポーツ障害
ロッククライミングやボルダリング、柔道やレスリングなど、強い力で「引く」「握る」「抱える」といった動作を繰り返すスポーツでは、上腕筋が酷使され、筋疲労や肉離れなどの障害の原因となります。
4:評価とアプローチ
触診方法
上腕筋は上腕二頭筋の深層にあるため、触診には少し工夫が必要です。
- 患者の肘を軽く曲げ、リラックスさせます。
- 上腕二頭筋の筋腹を指でつまみ、内側または外側にずらします。
- 上腕二頭筋の深層で、上腕骨に付着している硬く広い筋腹を探ります。特に、上腕二頭筋の外側縁から深く圧迫していくと触知しやすいです。
- 患者に肘を曲げてもらうと、指の下で上腕筋が力強く収縮するのが確認できます。
協働筋と拮抗筋
- 協働筋: 肘の屈曲において、上腕二頭筋、腕橈骨筋と協働します。これら「肘屈筋トリオ」のそれぞれの役割(前腕の肢位による)を理解し、どの筋肉に問題があるかを評価することが重要です。
- 拮抗筋: 肘の伸展に働く上腕三頭筋、肘筋と拮抗します。肘の伸展制限を改善するには、上腕筋のリリースと同時に、拮抗筋である上腕三頭筋の機能を促通することも有効です。
筋膜連鎖と運動連鎖
- 筋膜的連結: 上腕筋は、上層の上腕二頭筋と筋間中隔を介して連結しており、両者の間で癒着が起こりやすいです。また、アナトミートレインの**「ディープ・フロント・アーム・ライン」**の一部として、前腕の屈筋群とも筋膜で繋がり、手首や指の動きにも間接的に影響を与えます。
- 運動連鎖: 肩関節の動きとの連動も無視できません。例えば、巻き肩姿勢で肩関節が常に屈曲・内旋位にあると、相対的に肘も屈曲しやすくなり、上腕筋は常に短縮位に置かれます。この場合、肩のアライメントを修正することが、上腕筋の過緊張を根本的に解決する鍵となることがあります。
筋膜リリースとIASTMアプローチ
過緊張や短縮を起こしやすい上腕筋には、筋膜リリースが非常に有効です。特に、私たち日本IASTM筋膜リリース協会-EXA(イグザ)が推奨するIASTMは、多くのメリットを提供します。
- IASTMがおすすめな理由:
- 深層への的確なアプローチ: 上腕二頭筋の深層にある上腕筋に対し、ツールを使うことで的確な圧を深部まで届かせ、効率よくリリースすることができます。
- 筋間中隔のリリース: 上腕二頭筋と上腕筋の間の癒着(筋間中隔の癒着)をリリースするのに非常に効果的です。これにより、両筋の滑走性が改善し、動きがスムーズになります。
- 線維への多角的な刺激: 筋線維に沿って、また横切るようにツールを滑らせることで、組織に多角的な刺激を加え、血流改善や痛みの緩和を促します。
- IASTMアプローチの概要: 患者を仰臥位にし、肘をできるだけ伸展させて上腕筋を伸長させます。上腕二頭筋を内外にずらしながら、その深層にある上腕筋を狙って、上腕骨に沿うようにツールでアプローチします。
ストレッチ
上腕筋だけを単独で効果的にストレッチすることは難しいですが、肘を完全に伸展させ、さらに肩関節も伸展させる(腕を体の後ろに引く)ことで、上腕前面全体の柔軟性を高めることができます。
まとめとセミナー・資格のご案内
今回は、【上腕筋】が上腕二頭筋の影に隠れた「真の肘屈筋」であり、肘の痛みや可動域制限、特に関連痛として親指の付け根にまで影響を及ぼす、臨床上非常に重要な筋肉であることを解説しました。
理学療法士やトレーナーの臨床において、上腕二頭筋や前腕の筋肉だけでなく、この上腕筋の存在を意識し、的確に評価・アプローチできるかどうかで、クライアントの改善度は大きく変わってきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
少しでも学びが得られたら幸いです(^^♪
私たち日本IASTM筋膜リリース協会-EXA(イグザ)では、今回ご紹介したような詳細な機能解剖学に基づいた評価と、IASTMという先進的かつ効果的な筋膜リリースの技術を学べるセミナー、そして専門家としての価値を高める資格認定プログラムをご用意しています。
肘関節へのアプローチに新たな視点と武器を加えたいと願う皆様、当協会のセミナーがそのための強力なサポートとなることを自信を持っておすすめします。
より詳しい内容や、筋-筋膜組織の機能を改善させるIASTMテクニック、詳細な評価方法などは、オンラインIASTMセミナーや対面でのアドバンスドセミナーでお伝えしております♬
ご興味を持っていただける方は、相場と比較して安い金額でお家に居ながら手軽に取得出来る『オンラインIASTM認定資格セミナー』のご受講をおすすめ致します(^^♪
少しでも、痛みや不調を抱えている方の改善と、それを提供出来るセラピストの皆様の技術向上に貢献できればと願っております♪
最後までお読みいただき、ありがとうございました♪
日本IASTM筋膜リリース協会-EXA(イグザ)、広報部より